豆男、豆女 of スタジオナルカリ

豆男、豆女

珈琲豆保存容器

豆男、短編小説

豆男.JPG金曜日の夕刻、あまり誰も歩きたがらないような薄暗い路地裏を一人の男が歩いていた。三十歳半ばくらいだろうか、会社の営業マンだろうか、背広姿の男は何かを探しているかのようだ。辺りは寂れた店ばかり、バーにスナック、どれも客が入ってないようなそんな店ばかり。
 あたりを見回す男。その目線はある怪しげなカフェに向けられた。
「珈琲」と書かれた看板。店の名前はなんというのだろうか。
 男の探していたものはここだろうか、やっと見つけたかのような安堵の表情を浮かべた。
 扉は渋くキキ~と嫌な音をたてながら開いた。
「こんにちは」
 男は店に足を踏み入れた。すぐにカウンターの中にいるマスターに目がいった。
 痩せこけておとなしそうなマスターは、まるで待ち構えていたかのように黙って男を見つめていた。

 男は地下室に連れて行かれた。
「さあ、どうぞ」
「ぎゃー」
 男はその地下室にいる一人の女に目がいった。
 その女は珈琲豆を保存する容器と化していた。
「まめ女です」
 マスターはにやりと微笑んだ。
「すばらしい!!」
 男は驚きと感動を隠しきれずに大声を上げた。
「俺もこの女のようにまめ男にしてくれるのですね!」
「はい。あなたが望むなら、あなたは今日からまめ男です」
 男の顔は喜びで溢れそうだった。男はどれだけこの日が来るのを待ち望んでいたことだろう。やっとこの日が来たのだ。
「マスター。お願いします」
豆男2.JPG